疎遠な相続人より信頼できる身近な他人に!!!
死後事務委任
死後事務委任とは、死後の事務手続きについて任せたいと思った委任者が、手続きを行ってくれる受任者との間で生前にあらかじめ契約しておくことをいいます。
契約なので、自分の死後に行ってほしい事務手続きを依頼すれば良いのですが、例えば以下のような内容を契約書に盛り込むことが考えられます。
①親族等、関係者への死亡の通知
②役所への届出(死亡届、戸籍、年金の資格抹消等)
③葬儀に関する手続き
④埋葬に関する手続き
⑤住居の管理手続き
⑥各種サービスの解約・精算手続き
⑦ペットの引き渡し
このように、死後事務委任契約は自分が亡くなった後に気になる手続きがあれば自由に依頼しておくことができます。最近では故人が開設していたブログやSNSの閉鎖手続き、告知なども死後事務委任に入ることがあるかもしれません。
なお、死後事務委任契約は、相続財産については対応できません。
死後事務委任契約は、自分の死後に行ってほしいことを自由に決めておくことができますが、相続財産については対象外です。「〇〇さんに土地建物を相続させる手続きをしてほしい」とか、「□□さんに銀行預貯金を相続させる名義変更手続きをしてほしい」といったことを死後事務委任契約に盛り込んでおいたとしても、受任者がこれを行うことはできません。
相続財産についての死後の取り決めをしておきたいときは、死後事務委任契約書の他に遺言書を作成し、遺言執行者を決めておくようにしましょう。
行政書士へ依頼するメリット
死後事務を行政書士に依頼するメリットは、どのようなものがあるでしょうか。
死後事務委任契約は、そもそも専門家へ依頼することが想定されています。
亡くなった人の家族に死後事務を依頼する場合は、家族が葬儀の手続や役所への死亡届出をすることは当然ですので、役所にわざわざ契約書を提示しなくとも家族であることを証明しさえすれば手続きに応じてくれます。
もっとも、死後事務委任は契約ですので両者の合意があればよく、専門家以外の知人や第三者と契約することもできます。
しかし、専門家以外の人に死後の葬儀手続きを行ってもらうためのお金を預けたり、報酬をあらかじめ支払っておいたりすると、使い込まれてしまう可能性があります。
この点、専門家へ依頼しておけばまずこういったリスクを避けることができますし、死後事務委任についてのきちんとした契約書も作成してもらうことができますので、自分が希望した死後事務手続きを正確に行ってくれる可能性が高いといえるでしょう。
どうしても専門家以外の知人や第三者へ死後事務委任をしたい場合は、少しでもリスクを減らすために死後事務委任契約書を公証役場で公証人の面前で作成してもらう「公正証書」にしておくことをおすすめします。
他の専門家との比較
行政書士以外の他の専門家、弁護士や司法書士に依頼する場合と比べた場合はどうでしょうか。
一般的に、弁護士や司法書士は裁判手続きを行えたり、登記手続きを行えたりしますので行政書士よりも広い範囲で法律上の業務を行うことができる、といった特徴があります。
しかし、死後事務委任契約については、特に行政書士だからこの業務はできない、ということはありません。弁護士や司法書士と変わらない範囲で死後事務を委任することができますので、他の専門家に依頼しないと目的を達成できないということはありません。あと私の事務所は不動産業も兼業しておりますので、相続人の依頼がありましたら、不動産の売買などもスムーズに行えます。
また、行政書士は、一般的に弁護士や司法書士に比べ、依頼するための手数料が安いところが多いです。
私の事務所では死後事務全部ではなく一部だけ依頼したい、という場合でも相談に応じますのでお気軽にお問い合わせ下さい。
任意後見
高齢になるに伴い、認知、判断能力が低下する傾向は誰にも見られるようになります。能力低下が進行していくスピードには、個人差があります。もし、認知症にかかると、やがて自立して日常生活を送ることが困難になってきます。
将来に判断能力が落ちたときに備えて、所有財産の管理と日常生活において必要になる契約の管理を自分で指定した者に任せることを当事者の間で契約しておくことができ、これを任意後見契約と言います。公正証書を利用して契約することが必要になります。
任意後見契約の類型
任意後見契約には、任意後見の開始する時期、それまでの間に財産管理等の契約があるか否かによって3つの類型に分けられます。
1.将来型
将来に判断能力が低下したときに備えて、本人が希望する者を任意後見受任者として指定し、その者との間に任意後見契約を結びます。
そして、実際に本人の判断能力が低下した時期に、任意後見受任者が任意後見監督人の選任申し立てを家庭裁判所に対して行ないます。
適切な時期に家庭裁判所に申し立てをしなくては任意後見契約を活かすことができませんので、任意後見受任者は本人の身近にいる者が望ましいと言えます。
親族以外の者を任意後見受任者に指定するときは、見守り契約を結んでおき、精神面を含めた本人の健康状態を継続して見守ることも考えます。
2.移行型
任意後見契約を結ぶと同時に財産管理を委任する形態の任意後見契約になります。
本人の身体上の健康状態が良好でないときには、委任契約に基づき、本人の財産管理を受任者で代行することができます。
任意後見を開始するときは、身上監護も含めて委任する対象範囲を拡げます。
財産管理の委任契約を続けることにより、任意後見を開始せずとも財産管理が可能になりますが、任意後見制度の趣旨に基づいて適切な運用が求められます。
3.即効型
将来に任意後見を開始するのではなく、既に判断能力が低下している状況にあるため、任意後見契約の締結と同時に任意後見を開始させるときに結ばれる型になります。
法定後見では、それが開始するときは家庭裁判所が後見人を選任することになるため、本人で代理行為の範囲を決められません。
本人の希望に応じた委任内容で後見を受けたいとき、又は、希望する者に任意後見人に就いてもらいたいとき、即効型の任意後見契約が利用されます。
法令に定める手続き
任意後見制度は、『任意後見契約に関する法律(平成十一年法律第百五十号)』に具体的な事務等について取扱いが定められています。
制度の名称には「任意」が付きますが、任意後見は法律に基づく制度であり、間接的になりますが家庭裁判所の関与することが制度に組み込まれています。
私人間の契約になるものの、それを家庭裁判所が間接的に監督することになります。
制度の安全を確保するため、任意後見契約(変更のときも含む)は公正証書を利用して行なうことを法律で定めています。
任意後見にかかる費用
任意後見契約における任意後見受任者は、本人の家族であることが一般的です。
そのため、任意後見人に対して報酬を支払うか否かは、当事者の関係にもよりますが、家族間の契約になるときは、一般には無報酬になります。
ただし、任意後見を開始する時には「任意後見監督人」を選任することが必須となり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
任意後見監督人は、任意後見人が任意後見契約に基づいて適正に受任業務を遂行しているかを監督する立場にあり、家庭裁判所に監督について報告する義務を負っています。
家族以外の者が任意後見監督人につくと、報酬の支払いが生じることになります。
なお、任意後見契約は公正証書を利用しますので、契約に際して公証人手数料の負担が生じることになります。
遺言書とあわせての作成
任意後見は、本人の判断能力が大きく低下した以降に開始させるものですが、途中で終了することは一般に想定されていません。
判断能力を低下させる認知症は、改善することは少なく、徐々に進行していきます。
そのため、いったん任意後見が開始されると、法定後見へ切り替えられることがなければ、終身にわたり継続し、財産管理が本人に代わり任意後見人によって行われます。
こうしたことから、本人が遺言書を作成してあるときは、遺言の内容を踏まえた財産の管理を行なうことが望ましいと言えます。
もし、任意後見人が遺言の内容を知らないまま財産を管理すると、必要経費等の支出が行なわれることになり、遺言と違った形で相続を迎える可能性が出てくるためです。
遺言の内容と整合する財産管理が望ましいこと、任意後見受任者には家族が指定されることが多いこと、遺言公正証書は公証人が作成することなどから、遺言公正証書を作成する時に任意後見契約をあわせて結ぶことも多くあります。
そうすることにより、本人は自分の判断能力が低下した時から相続の起きるまでを整理することができ、老後の不安を低減できることになります。